いーむの日記

本とか映画とか音楽とかいろいろ

若い頃の自分に伝えたいこと

・物怖じするな。あなたにも楽しむ権利はある。背筋を伸ばしてなんでも堂々と参加しろ

・成人式には出なくてもいいが、家族と一緒に写真だけは撮っておけ

・食べ過ぎと飲み過ぎを続けると痛い目にあうぞ。身体に良い習慣を身につけておけ

・日焼け止めは一年中塗れ

・歯医者で痛かったら躊躇せずに左手を挙げろ。不要な我慢をするな

・足が遅くても気にするな。大人になれば遅刻しない限り鈍足で困ることなどない

・人の目を見て話すことに慣れろ。どんな相手にもとって食われるわけじゃない

・卑屈になるな。おどおどしていると相手はあなたを軽んずるようになる

・声の大きい人にひるむな。声の大きさと正しさは関係ない

・悲しいできごとやショックを受けることはこれから死ぬほどある。それでもあなたは死なない

・喪失に伴う痛みは完全には消えない。共存していく術を学ぶだけだ。それでも笑える日も来るし、前に進むこともできる

・「神は乗り越えられない試練は与えない」とか「やまない雨はない」なんていうフレーズを鵜呑みにするな。辛ければ辛いと宣言して逃げてもいい

・他人や親の顔色をうかがい過ぎるな。その人は単純に機嫌が悪いか体調が悪いかで、あなたに責任はない

・「やめてください」「不愉快です」自分を貶める相手に対して否定の言葉を言えるように練習しておけ

・自分より弱い立場にあるひとに思いを寄せろ。若くて健康だからといって特別な存在だと勘違いしてはいけない

・飽きっぽいという自覚があるなら、それとうまく付き合う方法を早めに模索して工夫しろ。特性を治すのではなく、やり方を変えろ

・体力には個体差があることを理解しろ。世間の標準なんか気にするな

・「よそはよそ。うちはうち」という親の言葉をたまに思いだせ

・世間や大人は思っているよりずっといい加減に動いていると早めに知って肩の力を抜け

・「1か100か」でものごとを考えるな。現実はもっと曖昧模糊としている。粘り強く考えろ

・絶対の正義や正解を求めるな。そんなものはなく、その時、その場の最適解がただあるにすぎない

・世界にあふれる不平等や理不尽は消えないが、それに対して戦っているひとがいることは知っておけ。できればそれになにか協力できる方法を考えろ

・やさしさと誠実なことは似ているようで違う。悪人でも優しいひとはいるから気をつけろ

・若いうちの方が人生は大変だ。歳をとれば今より楽になるからそんなに悲観するな

・人生は手持ちのカードで勝負しなくてはいけないと肝に銘じろ。指をくわえて他人のカードを羨んでいるうちに、時間はどんどん過ぎていく

・楽しいと思うこと、好きなことは追求しろ。それが辛いときの心の支えになるのだから

これであなたもアカデミー賞で受賞スピーチができる

忘れてはいけないこと

アカデミーへの感謝

どんなに予想外の受賞だったとしても、これを忘れることはありえない。これには魔法のフレーズがある。「I'd like to thank the Academy.」というやつだ。これを冒頭に言っておけば間違いない。あとは英語力不足で言葉につまったとしても、「感激のあまり言葉が出ません」と言って終わらせられれば好印象を与えることができる。(映画芸術科学アカデミーアカデミー賞の選考・授与を行う団体)

 

監督、共演者、スタッフに感謝を述べる

これを忘れると自分の力だけで受賞したような傲慢な印象を与えかねない。できれば舞台へ上がる前に、監督・共演者に駆け寄り抱擁するとなお印象が良い。あなたが受賞した作品が有力な候補作品であれば、関係者はステージ近くに坐っているだろうから、探すのに苦労しないはずだ。そうは言ってもスタッフが多すぎてどこまで感謝を述べればわからない、という場合には「この映画に関わったすべての人に感謝します」というフレーズがある。本の謝辞とは違って生配信にはタイムリミットがあるのだ。

ちなみにあなたが個人ではなくチームで受賞した場合には、複数でステージに上がるはずだ。その際はマイクの前に我先にとしゃしゃり出るのではなく、チームのメンバーに「お先にどうぞ」とマイクを譲ろう。あなたはとても礼儀正しい人間に見えるはずだ。

 

パートナーへの感謝を述べる

もしあなたがパートナーを伴って会場入りしているのなら絶対に忘れてはいけない。あなたがパートナーに感謝を述べる時、必ずそのパートナーがカメラに映るからだ。あなたが過去になにかしらのスキャンダルを起こしたり、キャリアが低迷した時期があるならなおさらそれを支えてくれたことについて感謝を述べなくてはならない。授賞式は一瞬だが、その後の生活は続くのだから、パートナーとの良好な関係は保っていく必要がある。

 

場合による。逆効果の場合も……

他の候補者への称賛

メリル・ストリープと一緒にノミネートされるなんて……」のようなスピーチは、相手がメリルのように過去に受賞したことがある人であれば良いが、そうでない場合にはかえって嫌味に見える場合も。特に自分以外の候補者全員に言及するのは明らかにやり過ぎで興ざめしてしまう。

 

人種や性別を代表するようなスピーチ

あなたが何かしらのマイノリティであったとして「この受賞は◯◯全員の勝利です」とか「◯◯を代表して受け取りたい」などと言うのは素敵だが、あなたが普段それ(人種問題、ジェンダー問題など)について活動したりSNSで発信したりしていないのであれば、それに関して言及しないほうが無難である。とってつけたような印象を与えかねない。ハル・ベリーキャスリン・ビグローミシェル・ヨーのように何かしらの「史上初」であれば感動的であるが、そこまででもない場合は後日自分のSNSで発信しよう。

 

政治的スピーチ

マイケル・ムーアのように、普段からそれをテーマにした映画を作りそれで受賞した場合はまだ良いが、自分の受賞した作品や仕事にまったく関係ない政治的主張を受賞スピーチに絡めるのはもっとも嫌われる行為だと肝に命じよう。(78年のヴァネッサ・レッドグレイヴを見よ)あなたは良い仕事をしてその功績を称えられたに過ぎない。何かを訴える場所は他にあるはずだ。

 

私が思う最高にクールなスピーチ
2000年(第73回)、『トラフィック』で監督賞を受賞したスティーヴン・ソダーバーグ監督のスピーチはまったくクールだった。今でも忘れられない。

I want to thank anyone who spends part of their day creating. I don't care if it's a book, a film, a painting, a dance, a piece of theater, a piece of music... Anybody who spends part of their day sharing their experience with us. I think this world would be unliveable without art, and I thank you. That includes the Academy. That includes my fellow nominees here tonight. Thank you for inspiring me. 

一日の一部を創作に費やしている人たちに感謝したいと思います。 それが本、映画、絵画、ダンス、演劇、音楽など、私たちと経験を共有して一日の一部を過ごしてくれる人なら誰でも構いません。 この世界は芸術なしでは生きていけないと思います、そして感謝します。 それにはアカデミーも含まれます。 その中には、今夜ここにいる私の仲間の候補者も含まれます。 インスピレーションを与えてくれてありがとう。

 

aaspeechesdb.oscars.org

もう聞けなくなった褒め言葉をまだ待っていること

昨日、3/5は父の誕生日だったので、父のことを書こうと思う。父が他界したのは私が29歳の時。2005年だったので、生きていれば77歳になる。

父は東北の雪深い地域の生まれ育ちで、寡黙というわけではなかったが、褒め言葉を積極的に口に出して子どもに伝えるような人ではなかった。

例えば私が受験に合格したり、良い成績をとったりした時、はっきりと言葉で褒められたことはあまり記憶にない。どちらかというと嬉しそうな笑顔が言葉をおぎなう、というタイプの人だった。

私は両親からの愛情を疑うことなく育った。叱られたり諍いがあったりどうしても相容れない考えももちろんあったが、それでも父が私を愛してくれていたことはきちんと伝わっていた。それで充分だと思っていた。

父が他界した時、父の知人や古くからの友人の方が弔問に来てくれた。その時「よく娘さんのことを褒めていたよ。自慢の娘さんたちだった」(私は二人姉妹である)と何度か聞かされた。それを聞いて驚いた。そんなにストレートに父から直接伝えてもらったことがあっただろうか。

アメリカのドラマや映画で「I'm proud of you」という言葉を、親から子へかけるのを見ることがある。『大草原の小さな家』でも「父さんはおまえを誇りに思う」と言っていたような気がする。

そしてそういう表現を見るたびに思うのだ。もっと言葉で伝えてほしかったと。私は40代も後半に差し掛かろうというのに、もう決して得られない言葉を、二度と会えなくなったひとからの言葉を切望しているのだ。

そしてその言葉を父の口から聞けたら、その時私も伝えたいと思う。

大切に育ててくれてありがとう。お父さんがいなくなった後に、私、結婚したんだよ。周りの友人たちがどんどん結婚しだしてちょっと焦っていた頃に「ここまで待ったんだから、相手を選ぶのに妥協するな」と言ってくれたよね。その教えを守ったから、ちゃんと素敵なひとに出会えたよ。

私が一番残念に思っていることは、彼とお父さんを会わせてあげられなかったことだよ。きっとお父さんも彼のことが気に入っただろうから、それまでもう少し待ってくれても良かったのに、あちらに行くのが早すぎるよ。

ともあれ、誕生日おめでとう。あちらで楽しく過ごせていますように。

 

愛する人がいなくなり、からだ中に怒りがあふれるのを感じるときも、あれもこれも心配したり疑問に思ったり、答えを求めるのはよして、速やかにひとつのことだけを思い出そうと努める。それは亡くなったわたしの愛するひとたちからこれまでに学んだこと、そして、これからも学べることだけを考えるべきだということである。すばらしい人生を送るのに役立つどんな遺産が残されたかだけを考えるのだ。(マヤ・アンジェロウ

 

とにかくゴムパッキンを外して洗うのが面倒な人へお勧めの3品

パッキンを洗うのって本当に面倒なので、私はこういう商品を使っています。

 

水筒(保温機能あり)
象印ステンレスマグSM-ZB

私は480ミリのサンドベージュを購入。商品の特徴は下記リンクに詳しいので詳細は省きますが、「シームレスせん」という技術が素晴らしいのはもちろんですが、とにかくカラー展開が良いんですよ。テカテカの黒とかじゃなくて、マットなグリーンとかペールトーンがきれいです。グレーだけでもフォレストグレーとミディアムグレーがあります。デスクに長時間置いて使うことを考えると、視界にうるさくない色を選びたいのでとても良かったです。お茶を入れてリュックに無造作に突っ込んで歩いたりリュックおろしたりしましたが、ぴっちり締まっていて漏れることもなく、保温性も問題なし。いま見たらAmazonは39%オフです。

水筒・タンブラー | 商品情報 | 象印マホービン

 

水筒(保温機能なし)
◆nalgene(ナルゲン) 広口0.5L

温かいものでなければこちらもおすすめ。保温機能はないですが、とにかく軽くて丈夫なので本来の使用法であるアウトドアはもちろんスポーツにも良さそう。こちらもカラー展開が本当に良いので選ぶのに悩みます。私はオウバジーを使用中。オウバジーってどうやら「aubergine=茄子」らしいですがそんなに濃い紫ではありません。このボトルの特徴として「本体とキャップ一体型」という点があるのですが、慣れないと蓋が鼻にぶつかったりして煩わしいので、デスクで使うならストロー推奨。1リットルも持っていますがこれは大きいので通常のストローは沈んでしまうのが難点。いずれにせよ日常生活なら0.5Lで充分かと。(飲み方もいずれ慣れて蓋を押さえながら飲めるようになります)

広口0.5L Tritan™Renew - BOTTLE - nalgene ナルゲン | HIGHMOUNT ハイマウント

 

弁当箱
◆ゼブラ ステンレスランチボックス

これもう展開していないんだろうか。すごく気に入っているのですが。まあゼブラのでなくてもAmazonで「ステンレス 弁当箱」でヒットすればなんでもいいと思います。要はサイドの金具パッキンで蓋をする形状のものです。ゴムパッキンがないというメリットだけでなく、ステンレスなのでぬるつきがない!洗いやすい!匂いがうつらない!という素晴らしさ。デメリットとしては電子レンジにかけられないことですが、私はそこまでほかほかにこだわらないので全然問題ありません。むしろ洗いやすさの感動が上回りました。本当に衝撃でした。ぬるぬるしないって素晴らしい。

 

洗うときには・・・
◆マーナ 水筒すき間洗いブラシ
水筒キャップのネジ部分や飲み口はこんなブラシで洗っています。
 

田辺聖子の小説の配役を妄想する

田辺聖子の小説が好きだ。

映像化された作品では「ジョゼと虎と魚たち」 (角川文庫)が有名だろう。(私自身は、他に収められた作品の方が好みなのだが)

ただ、「ジョゼ・・・」以外の映像作品は聞いたことがない。私はずーっと前から「この小説を映像化するならこの人にこの役をやってほしい!」という願望(妄想)があるので、それをつらつら書いておこうと思う。

 

お目にかかれて満足です

恋に仕事に結婚に心豊かに打ち込む女の物語。
神戸山手の古い異人館に住む料理と手芸が大好きな主婦るみ子32歳。自宅にアトリエを開き、小物や洋裁の創作に夢中になる一方で、夫・洋の弟にときめきを覚える。そんな妻を、洋は複雑な気持ちで見守る…。(Amazon

この主人公・るみ子の夫の洋が、るみ子が主婦業から仕事を始めて軌道にのってくると構ってもらえないことで不機嫌になる、というまあちょっと子供っぽい男性なのだが、私の脳内ではずーっと植草克秀で変換されている。ただし、私は彼の出演しているドラマはまったく見たことがないので、あくまでも「カッちゃん」と呼ばれている頃の彼をイメージしている。ただ現在の彼ではちょっと大人になりすぎたなぁ。30代の頃だったら本当にぴったりだったと思うんだけど。

そしてるみ子が心惹かれる洋の弟・舷には斎藤工というところまで妄想している。ちょっと謎めいていて独立していて「平和な日常生活にさざ波を立てる男性」に合っていると思う。ただ肝心のるみ子は全然浮かばないんだよなぁ。

 

恋にあっぷあっぷ

夫と恋人とパトロンを持つ贅沢を知った女心
アキラは結婚5年目にしてブティックに勤め出した。店を訪れた紳士に人生への深い洞察と優しさを感じ…。“妻”である女の揺れ動く心とその成長を描く大人の恋愛小説。(Amazon

この主人公・アキラ(女性)が恋に落ちるお金持ちの男性・鷹野氏はぜひ村田雄浩に演じてもらいたい。鷹野氏は容姿は「海亀」みたいだと評されているのだが、仕事で成功しているお金持ちで紳士であり優しくて余裕がありセクシー、という男性。これは第一条件としてまず身体が大きいことが絶対条件。その点村田氏は180センチなので文句なし。深みのある声も外せない。つるりとした細身美形の若手では出せない色気をぜひ見たい。

 

蝶花嬉遊図

売れっ子脚本家という立場を捨て、おしゃれを捨て、50代の妻子ある男、レオとの恋愛を選んだ33歳のモリ。ただレオがいて、楽しくおしゃべりして、美味しくご飯を食べる。3年続いているそんな生活が「幸福の極限」だった。幸せの絶頂は、永遠に続くのか。人生の本質を教えてくれる、恋愛小説。(Amazon

この「50代の妻子ある男、レオ」これはもう國村隼しか考えられない。田辺聖子國村隼という図式は言うまでもなく「芋たこなんきん」によるものなのだけど、田辺作品によく出てくる「妻子あり、おいしい食事と酒と楽しいおしゃべりが大好きな中年男性(関西弁を話す)」はもう全部國村隼でいいんじゃないかとまで思う。やっぱり田辺作品は関西弁ネイティブの俳優がいいな。

 

余談:「大人のドラマ」が見たい

最近とみに思うのが「しっとりとした大人のドラマが見たい」ということ。昭和の頃にやっていた向田邦子原作のドラマのイメージ。大人しか出てこない(30代以上)ドラマが見たい。あまり喋りすぎず余白や余韻があり登場人物がわめかない、CMみたいな喋り方をしない、そんなドラマって見られないんだろうか。

以前、Amazonプライム山田詠美原作の「A2Z」がドラマ化されており、原作を読んだことがあったので見てみたのだが、まあちょっと見るに耐えなかった。まず老舗出版社(新潮社あたりをイメージ)の文芸編集者に深田恭子ってことはないだろう。主人公の親友・今日子も原作では確か大学教授だったはずだがドラマでは「民俗学講師」にされていてそれはまあいいとしても、服装がまるで古着屋の店員みたいな格好をしている。あれは未だに納得いかない。「その仕事をしている人らしさ」というものがまるでなく、嘘くさいのだ。

 

先日BBCのドラマ「ザ・スプリット 離婚弁護士」を見て思ったのだが、「主人公がちゃんと仕事してる大人」というのがとても良かった。仕事をしている上で恋愛も描いており、ちゃんと説得力があった。こういうドラマをもっと見たい。(この作品については別の機会に書きたい)

 

第1話

第1話

  • ニコラ・ウォーカー
Amazon

 

 

 

 

かつて「洋楽オムニバスCD」という文化があった

かつて「洋楽オムニバスCD」という文化があった。私は「MAX」が元祖だと思っていたが、どうやらEMIからでた「Now」が元祖だった模様。あったなぁ。その後も「Fine」だの「Woman」だの、ものすごい数があった記憶が。ヒップホップのもあったな。

私のオムニバスCDの元祖は上記に挙げた初代のMAXだった。あのオレンジのジャケットのやつ。今はCDではなくもっぱらiPhoneで音楽を聞いているので、Apple Musicで当時のMAXを再現したプレイリストを作ってみた。曲順も揃えている。

MAXを再現したプレイリスト

で、いま聞いているんだけど、これがなかなかに良い。オムニバスCDって「自分の知っている曲」と「まったく知らない曲」ブレンド具合がほど良いバランスだったのだなぁと実感。サブスクで自分の好きな曲だけ集めてプレイリストを作れるのも楽しいのだが、「どこまでも自分の好きな曲」っていうのもそれはそれで飽和するときがある。
そして新しいものへの刺激や好奇心が廃れていく気がするのだ。

例えばこのMAXの中だったら、ジミー・クリフやアスワドやプライマル・スクリームはこのCDでしか聞いたことがなかった。それでも今聞いてもいいなぁと思う。知らないアーティストへの手がかりにもなるのがこのオムニバスCDの良いところで、親切な曲目紹介がちゃんとついているのだ。これはサブスクには望めない機能。

収録できる曲をギガの単位で計る現代では驚きの17曲しか入っていないが、そもそも1000曲、10000曲なんて必要ないのだ。(私にとっては)

関係ないが、昔のCDコンポって5CDチェンジャーとかあったな。あれってなんだったんだろう。隔世の感ありだ。

子どもの頃、親が懐かしの洋楽オムニバスカセットテープセットなんかを買っているのを見て「古いものばっかり聞いて大人ってやだなぁ」などと思っていたが、自分自身がその道を辿っているのだ。いまや私が口ずさめるのは圧倒的に90年代の曲だけだ。

 

図書館で借りた「MAX BEST」のラインナップがすごい。

1    ミス・ア・シング
2    恋人たちのクリスマス
3    マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン (タイタニック・愛のテーマ)
4    ヴァーチャル・インサニティ

こんなの歌うしかないでしょう!と日曜のリビングで歌いまくったのだった。(CDプレーヤーは夫が持っていた)

「黒人が持ってる緑は大事じゃない」

殺人罪で服役した黒人のアイク。出所後庭師として地道に働き、小さな会社を経営する彼は、ある日警察から息子が殺害されたと告げられる。白人の夫とともに顔を撃ち抜かれたのだ。一向に捜査が進まぬなか、息子たちの墓が差別主義者によって破壊され、アイクは息子の夫の父親で酒浸りのバディ・リーと犯人捜しに乗り出す。息子を拒絶してきた父親2人が真相に近づくにつれ、血と暴力が増してゆき――。(Amazonより)

黒人のアイクの息子・アイザイアと白人のバディ・リーの息子デレクは共に何者かに殺される。ゲイに偏見のあった父親たちは手を組んで犯人を見つけることにする。

ただしこの父親たちが立派な父親ではなく、アイクもバディ・リーも服役経験のある元・受刑者。アイクは今は庭師として自営業を営んでいるもののの、バディ・リーに関しては酒浸りのトレーラー暮らし。
ふたりとも生前の息子が同性のパートナーと結婚すると告げたときも冷たくあしらった過去がある。だからこそ和解しないままで死んでしまった息子たちに対する思いが切ない。

殺人犯を追うストーリー展開の他にも、人種問題やLGBTQ、ジェンダーといった問題が会話の中にさりげなく盛り込まれていてそのあたりも興味深い。

貧乏暮らしをしている白人のバディ・リーがアイクに対して「本当に大事な色はドル札の緑だけだ」と言う。
あんたの経営している会社やトラックをもらえるなら立場を替わってもいい、と言われたアイクはこう返す。
月に四、五回は警察に停車させられる、通りを歩けば白人女性が黒人から盗まれないようにハンドバックをしっかり抱える、上着に手を入れて携帯を取り出そうとしただけで頭に二発ぶちこまれる、それでも替わりたいか?と。

アイクもバディ・リーもゲイに対しての知見が深まるわけでも誤解を改めるわけでもない。
ただ「どんな息子でも、ただいてくれればよかった」という後悔に突き動かされてどんどん進んでいく。

次のチャンスを与える価値がないと運命が決めるまで、人は何度正しい決断をするチャンスを与えられるのだろう。(本文より)

犯人と動機は「え?」という感じで肩透かしではあったものの、それを上回る魅力がある。
それがキャラクター造形であり会話のテンポとセンス。どちらも私が海外ミステリに求めるものであり、この小説はその欲を存分に満たしてくれる。

キャラクターに魅力があるので実写化されたりしないかな?とも思うが、
バディ・リーに関してはサム・エリオットの劣化版」と作中で言われているのでイメージしやすいのが嬉しい。
また孫娘を「ミス・リトル・ビット」と呼ぶのがとても愛らしい。「おちびちゃん」みたいなニュアンスだろうか。
次作もぜひ読みたいと思う作家に出会えてとても嬉しい。

【補足メモ】
・「木材粉砕機」と聞いた瞬間に映画「ファーゴ」が浮かんだ。
・庭仕事に使う「タンパー」という道具を思わず画像検索した