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【読書メモ】転職ばっかりうまくなる / ひらいめぐみ

うまくなったら転職しない?うまくならないと転職できない??

転職ばっかりうまくなる

転職ばっかりうまくなる

Amazon
20代で転職6回。
「圧倒的成長」をしたくない人のための、ドタバタ明るい転職のすゝめ。
こんな会社ばっかりの世の中なんて終わってる--。Amazonより)
 
世の中には二種類の人間がいる。転職する人間と、転職しない人間だー。
 
などという言葉はないのだが、これは自信を持って言える。最初の一回を経験すると転職は慣れる。なんでもそうだけど、物件探しみたいなもん。会社選びのポイントとか自分が譲れないことは新卒だとなかなかわからない。
 
この本の著者は20代で転職6回。これは日本ではかなり多いんじゃないだろうか。
 
ただ「転職が多いと体裁が悪い」みたいな価値観は常々どうでも良いと思っていて、例えば結婚とかそれに伴う転居とか、体調を崩したとか出産・育児・介護・・・等々、生きていればライフイベントはわんさとあって、それがどうしても職場を変えることでしか対応できないことも正直あるんじゃないだろうか。
 
「向き・不向き」でいうと、これは大学時代などにアルバイトすることである程度見えてくる。著者は飲食店のアルバイトでは食器を次々に壊し、塾講師のアルバイトでは「自分が誰よりもクラスになじめない」という状態で辞めている。
 
私も塾講師のアルバイト経験があるが、あれはどちらかというと元々将来教職を目指している学生が多くて意欲も高くないとできないと思う。
 
著者は手探り・体当たりでいろんな職場を体験していく。お金がない時の不安や侘しさはわかるが、睡眠を削ってイベント開催のために副業したり、朝ごはんがビスコだったりするのは痛々しい。若い頃は馬力や気合で押し切ってしまいがちだが、仕事がしんどいときに食事と睡眠を二の次にするのは、必ず心身にダメージが来る。私は睡眠を削ると途端にガタがくるタイプなので、睡眠を侵食してくるような仕事はできないのだが。
 
この本で私がもっとも共感したのが次の箇所である。
 夢を持つのは、いいことだ。それは認めよう。だけど、夢がない人生だって、別になにも悪くない。おおきな仕事の悩みはなく、休みの日にはゆったりと映画を観たり漫画を読んだり好きなことをして過ごし、軽やかな気分でまた次の朝に出勤する。(P.127)
 
子供の頃から「将来の夢は?」という変な刷り込みをされているせいで「夢を持たないのは悪いことだ」と思い込まされがちだが、そんなことはないのだ。夢と将来つきたい職業が直結していて、幼い頃から脇道に逸れることなくその夢を持ち続け、目標どおりに叶える人がいる。それはスポーツ選手や芸術家や宇宙飛行士や医師だったりするのだろう。私はそういう人に憧れる。
 
私は幼少期から体力も気力も省エネでしか動けず、負けん気もほとばしるようなエネルギーも持ち合わせていなかった。それでも大人になった今、ささやかではあるが働くことで生計を立て、穏やかに一日を送っている。それが大きな夢を持つことより劣っているなどとは思いたくないのだ。
 
最終的に著者はフリーランスに着地する。転職回数が多い者からすると「結局このひとは書く才能があったからいいよね」などと、ともすれば僻みがちな考えに陥ってしまいそうだが、そうなってしまってはもったいない。
 
転職をすればその分、自分のゆずれない好みがわかってくる、と考えても良いのではないか。そして自分がわかればぐんと生きやすくなってくる。
 
私はとにかく都内の満員通勤電車がだめで、それが元で体調もメンタルも崩しがちだった。しかしテレワークメインの職場で働けるようになり、かなり生活しやすくなった。こんな働き方は新卒で就職した1999年には想像もできなかった。しょっちゅう体調を崩す自分は社会不適合者で出来損ないだと思っていたのだから。
 
ほんとうに極めるべきは、職業ではなく「自分自身」なのだ。(P.209)
 
番外編
US版『コスモポリタン』誌の編集長だったヘレン・ガーリー・ブラウンは18歳で仕事を始めてから16箇所の職場を転々としたそうだ。17箇所目でコピーライターとして出発し編集長にまで登りつめた。「コツコツと働きながら成長していくあなたなら、いつか必ず望みどおりの仕事がみつかって、花が咲きますよ」とこちらは上昇思考だけどこれはこれで面白い。