いーむの日記

本とか映画とか音楽とかいろいろ

夏祭りの後に叱られて

中学生の頃、同級生数人と近所のごく小さな神社の夏祭りに行った。羽目を外すことをほとんどしてこなかった私にはささやかな冒険だった。

帰宅するといつもは早く寝ている父が起きていて「何時だと思ってるんだ!」と怒鳴った。おそらく21時頃だったと思う。祭りの余韻に浸っていた私は冷や水をぶっかけられてすっかりしょげてしまい、それ以来、実家にいる間は夜に出かけることはなかったと思う。

今だったらスマホでLINEを送れば済む話だ。でも1976年生まれの私が中学生だった頃は携帯できる通信手段などなかったのだ。ガラケーですら大学生で手にしたのだから。

後に東野圭吾の『さまよう刃』を読んだ時、自分が叱られた日のことが蘇った。花火大会の後に一人娘をさらわれて殺害される男の話だ。

子どものいない私にでもわかる。連絡手段がない状態で子どもの帰宅を待つのがどんなに不安かということが。

そして夏祭りの季節になるたびに、あの時の父の雷を思い出す。理不尽で頭ごなしだと感じた叱責が、心からの愛情だったということに、感謝と懐かしさと寂しさの入り混じった思いがこみあげる。