いーむの日記

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旅行に行かない家

 旅行だと思っていたものは単なる「帰省」だった

 

結婚してから気づいたこと。それは実家が「旅行に行かない家」だったことだ。

夫は子供の頃、軽井沢に行ったり、冬にスキーに行ったりいわゆる「家族旅行」をしていたそうだ。それを聞いて自分の実家を振り返ると、そういった「家族旅行」をほぼしていないことに気がついた。

夏休みになるといわゆる「おばあちゃんの家」には毎年行き、プールやら花火やらを楽しんだ記憶はある。ただそれは「母の帰省」であって、純粋な「旅行」ではないのではないか?

小学生時代、夏休み明けによく聞いたのが「家族と常磐ハワイアンセンター(現在のスパリゾートハワイアンズ)に行ってきた!」という同級生たちの話である。幼い私はみんなのおばあちゃんの家が福島にあるんだと思っていた。そのくらい旅行というものに疎かった。

逆に言うとおばあちゃんの家に行く以外の旅行が存在することすら意識したことがなかったのだ。

実家は裕福ではなかったし、父の休みも不定期なようだったので、遠出することを楽しむ余裕はなかったのだと今は思う。大人になって気づくが、新幹線代も宿泊代も4人になると結構な金額になる。

夏休みになると空港などで海外旅行に行く子どもがインタビューされている様子をテレビでよく見かける。裕福だなぁと思いつつ、胸の奥がいまだにちくりと痛む。海外に行きたかったというわけではなく、純粋な家族旅行というものをもっと体験したかった。父が亡くなったので今はもうそれも叶わない。

実家が自営業とか観光業とかの子どもたちは夏休みどうしているのだろう。そんなこともうっすら思う。昔、「暮しの手帖」で、とある小さな海辺の街で、一日だけ街の家族が集まって海水浴を楽しむ、というような記事を読んだ。その街は海水浴客が詰めかける街なので、夏休みの間、自分の両親は観光客相手に仕事をしているのだ。夏休みが終わった頃の週末の一日、やっと親と一緒に海遊びを楽しめる子どもたちの話だった。

かなり昔の70年代くらいの記事だったと思う。あの町はいまどうなっているのだろうか。