新聞社映画の金字塔
以前「新聞社を舞台にした仕事映画というジャンルが大好き」と書いたことがある。
その元祖であり金字塔とも言える『大統領の陰謀』をようやく視聴。わかりやすいように、新聞社が舞台になっている映画の代表的なものを年代順にまとめてみた。
| 公開年 | 作品名 | 舞台になっている新聞社 | 取り上げている事件・テーマ |
|---|---|---|---|
| 1976年 | 大統領の陰謀 | ワシントン・ポスト | ウォーターゲート事件(1972年、米民主党本部盗聴事件から大統領辞任へ至る政治スキャンダル) |
| 2015年 | スポットライト 世紀のスクープ | ボストン・グローブ | カトリック教会による聖職者の性的虐待と組織的隠蔽(2001年〜) |
| 2017年 | ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書 | ワシントン・ポスト | ペンタゴン・ペーパーズ公表事件(1971年、ベトナム戦争に関する米政府の機密報告書を報道) |
| 2022年 | SHE SAID/シー・セッド その名を暴け | ニューヨーク・タイムズ | ハーヴェイ・ワインスタインによる性加害と#MeToo運動の発端(2017年) |
作品概要
【公開】1976年(アメリカ)
【監督】アラン・J・パクラ
【出演】ダスティン・ホフマン(カール・バーンスタイン)、ロバート・レッドフォード(ボブ・ウッドワード)
俳優たちの魅力
最近映画を観ると「パソコンがない時代」のオフィスに漂う熱気みたいなものを感じる。対面で話し、猛烈な勢いでタイプライターを叩く。特にこの映画でのタイプライターは助演男優賞ものの印象を残す。(ラストのかっこよさ!)
俳優としてのレッドフォードには何の興味もなかったのだが、今作ではなにかと暴走しがちな相棒のバーンスタイン(ダスティン・ホフマン)に対して良識ある正義感の強い記者像を嫌味なく演じていた。特に自分の書いた原稿をバーンスタインに直されて「この方が良い」と承諾するところが印象的。あとは人差し指だけのタイピング!
ダスティン・ホフマン(カール・バーンスタイン役)
特にウッドワードと並んで歩く姿が前のめりの早足になっているところに彼の情熱が出ていて良かった。デスクに立てかけてある自転車のタイヤはあれは盗難防止か何か?
インタビュー先でコーヒーをがぶ飲みしながら6時間も粘り、くしゃくしゃのメモをあちこちのポケットから出すシーンも印象的。
ジェイソン・ロバーズ(ベン・ブラッドリー編集主幹役)
実際にアカデミー助演男優賞を獲得したのは主演のふたりではなくこの人。若手記者に対して、根拠があるのか、取材源は信用できるのかと詰め寄る厳しさ。
社への風当たりが強くなってからは若手記者を支え、権力と戦う断固とした姿勢を見せる後半の演技が素晴らしい。編集会議での場面が特にぐっと来る。
ちなみに『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(2017年)でベン・ブラッドリーを演じたのはトム・ハンクス。ジェイソン・ロバーツが管理職っぽいのに比べて、トム・ハンクスはもっと現場寄りの感じだった。見比べてみると面白い。
印象に残ったあれこれ
- なにせネットがないので、何かを探すとなったら実際にその資料がある場所に赴き、ひたすら目視で探していくしかない。ふたりが並んで資料の貸出利用カードの膨大な束をチェックしていくシーンでカメラがぐーっと上がって視点が俯瞰ショットになるのが面白かった。
- 情報源の「ディープ・スロート」とのやり取りは駐車場の薄暗い空間で緊張感が漂うのだが、肝心の情報源の顔がほとんど影になっていて見えない。そこに暗中模索で取材するしかないウッドワードの不安が投影されているように感じた。本作のカメラマンはゴードン・ウィリス。『ゴッドファーザー』冒頭での陰影の濃さを思い出した。
- 「妻も、子どもも、犬も猫もいるんだ!」←今作品でもっとも好きな台詞!もったいないので背景は書かないでおく。人間追い詰められると支離滅裂なことを言い出すのだ。
まとめ
事件に関与している人物が多く、列挙される名前についていくのは大変なので、可能であれば事件の概要をざっくりつかんでおくと理解度が高まるかもしれない。(そもそもアメリカではこの事件をみんなが知っているという前提で作成されている作品だとか)
私自身はまったく調べずに視聴したが、それでも俳優陣の演技、静かだがぴんと張り詰めた緊張感、じりじりと真実に近づいていく演出など十分に楽しめた。
前述の『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』のラストシーンは本作の冒頭シーンにつながっているため、二作品をセットで観るのもおすすめである。