映画音楽には歌も入るよね?忘れられない主題歌、挿入歌を振り返る
映画音楽といえばハンス・ジマー、ジョン・ウィリアムズ、エンニオ・モリコーネ、ニーノ・ロータ・・・などいくらでも名作曲家が浮かぶが、視点を変えて「アカデミー歌曲賞」をピックアップしてみたいと思う。
ちなみに歌曲賞は作曲家。作詞家に授与されるもので、主題歌だけでなく挿入歌も対象。直近だと「RRR」で受賞した「ナートゥ・ナートゥ」のパフォーマンスが会場を湧かせたのが記憶に新しい。
今回参考にしたのはこちら。
1980年代:色褪せない楽曲の宝庫
82年「愛と青春の旅だち」の「Up Where We Belong」は名曲だよなぁ。ドラマティックなシーンを盛り上げる映画挿入歌のお手本。「ロッキー3」の「アイ・オブ・ザ・タイガー」が入っているのも嬉しい。
83年「フラッシュダンス…ホワット・ア・フィーリング」、84年「ゴーストバスターズ」、85年「パワー・オブ・ラヴ」(バック・トゥ・ザ・フューチャー)、86年「愛は吐息のように」(トップガン)あたりは、まさに曲を聞けば映画が浮かぶというケース。
そのシーンと曲が合致するだけで映画というよりもミュージックビデオの様相を帯びてきているのがこの頃。恐らく80年代からサントラを購入する、という文化が発生したのではないかと推測。
ポップ、ロックが席巻している印象だが、89年「アンダー・ザ・シー」(リトル・マーメイド)の受賞がアラン・メンケン・ディズニーの時代の到来を予告している。
1990年代:ディズニー一強時代に現れるあの超ヒット曲
まずはこれを見ればどれだけ90年代のディズニーとその楽曲がすさまじかったかわかるだろう。
91年「ビューティー・アンド・ザ・ビースト」(美女と野獣)/アラン・メンケン
92年「ホール・ニュー・ワールド」(アラジン)/アラン・メンケン
94年「愛を感じて」(ライオン・キング)
95年「カラー・オブ・ザ・ウィンド」(ポカホンタス)/アラン・メンケン
99年「You'll Be in My Heart」(ターザン)
実に1990年から1999年までの10作品の中でディズニーが5作品受賞、そのうち94年のエルトン・ジョン、99年のフィル・コリンズ以外はすべてアラン・メンケンが受賞している。
受賞しなかった年でもノミネートされていたり、「アラジン」のように一つの作品から2曲ノミネートされている年もあるからすごい。ちなみに「ライオンキング」からは3曲ノミネート。
ディズニーの歌は旋律が美しいことはもちろん、作品内のキャラクターが歌っても歌手が歌っても違和感がなく、どのシーンにもこれ以上ないくらいにふさわしい。
ここに割って入るのが97年の「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」(タイタニック)。これは映画主題歌史上もっとも有名といっても過言ではないだろう。
その他印象的なものとしては、「ビコーズ・ユー・ラヴド・ミー」(アンカーウーマン)、「ハウ・ドゥ・アイ・リヴ」(コン・エアー)、「ミス・ア・シング」(アルマゲドン)などのダイアン・ウォーレン作品が気を吐いていること、ランディ・ニューマン(トイ・ストーリーシリーズ)の名前がちょこちょこ出てきていることだろうか。
ブラック・ムービーについて書いたときに「ブラック・ムービーはサントラがいい」と書いたが、ここまでブラックミュージックはジャネット・ジャクソンの「アゲイン」(ポエティック・ジャスティス)くらいしか見新たらないのは寂しい。
パフォーマーとしては「ホエン・ユー・ビリーヴ」(プリンス・オブ・エジプト)でのホイットニーがいるが、あまり良いステージとは言えなかったと思う(声がかすかすだった記憶が)
個人的にはアリーヤの「ジャーニー・トゥ・ザ・パスト」(アナスタシア)のパフォーマンスが忘れられない。
2000年代:ミュージカル、ドラマ、アニメーションのカオス状態
2000年は異色の幕開け。「シングス・ハヴ・チェンジド」(ワンダー・ボーイズ)のボブ・ディランは、従来の美しい旋律やキャッチーなメロディ、明確な歌詞の世界、というディズニー世界とは正反対。
中継でのパフォーマンスだったが、ダニー・デビートがイチゴつまみながらシャンペンかなんか飲んでたのがちらっと映ってなんかすごく覚えてる。
もうひとり異色のノミネートが「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のビヨーク。曲よりもそのドレスで度肝を抜いた。「白鳥ドレス」としてWikipediaまであるとは驚き。
とにかく2000年代は作品自体のジャンルがバラバラな上、私自身が見ていない作品も多く、80年代、90年代のようなヒット曲もないように見える。「ドリームガールズ」から3曲入ったのが目立つくらいだろうか。
そんな中エポックメイキングとも言えるのが「ルーズ・ユアセルフ」(8 Mile)の受賞!ラップ・ソングとしては史上初の快挙だそう。エミネム本人は欠席し共同制作者がオスカーを受け取ったが、面白いファッションだった。
2010年~2020年代:007主題歌の受賞が目立つ
ダニエル・クレイグ主演になってからの007主題歌は以下のとおり。
「ユー・ノウ・マイ・ネーム 」(007 カジノ・ロワイヤル)
「アナザー・ウェイ・トゥ・ダイ (007 慰めの報酬)
2012年受賞「スカイフォール 」(007 スカイフォール)
2015年受賞「ライティングス・オン・ザ・ウォール」 (007 スペクター)
2021年受賞「ノー・タイム・トゥ・ダイ」 (007 ノー・タイム・トゥ・ダイ)
かなりの高確率と言えるのではないだろうか。
ただし超個人的な意見を言わせてもらうと受賞曲全部暗いのが気になる。私は007主題歌だとティナ・ターナー「ゴールデンアイ」とかマドンナ「ダイ・アナザー・デイ」が好きなのでどうにもこの年代の主題歌とは相容れないのだ。
他にはコモン、ジョン・レジェンドによる「グローリー」、シンシア・エリヴォによる「スタンド・アップ」のパフォーマンスが素晴らしかった。ファレル・ウィリアムス「ハッピー」もいい曲だったな。
まとめ
ざっと駆け足で振り返ったが、やっぱり覚えている曲は圧倒的に80年代・90年代が多いなぁと実感。
ホイットニー・ヒューストンやらセリーヌ・ディオンのようないわゆるディーバ系の歌手が主題歌を担う時代はもう終わったのか?という感想も。現代だとビヨンセくらいか。
どこかの機会で、今度は歌曲以外の映画音楽を書いてみたい。