マライア・キャリーのしぶとさに乾杯

この番組は毎週楽しく聞いているのだが、ついにマライア・キャリー

「マツコと共に振り返るマライア・キャリー」20250508 ... - ミッツ・マングローブのOSAKA・ん!メガミックス - Apple Podcast

私が初めて買った洋楽CDがマライアのデビューアルバム。旧都南村(現・盛岡市)のニチイのCDコーナーで『7オクターブの歌姫』とかいうポップに惹かれたんだと思う。90年代はずっとチャートの中心にいた記憶。今みたいに「クリスマスの歌の人」じゃなかった。コーセーの口紅のCMにも出てたし。
マライアについていろいろと考えてることをメモ。

ヒップホップへの方向転換


マライアとヒップホップといえばHoneyが有名だけど、個人的にはこれにびっくりした。ラッパーと組む女性シンガーって今は当たり前だしジェニファー・ロペスなんかが目立つけど、実はマライアが先駆者だったらしい。トミー・モトーラと離婚してからこの方向転換は顕著になったのだが、離婚後は元夫から仕事面での嫌がらせを受けて精神疾患を発症したそうだ。そんな壮絶な過去があったのか。この時期はと好きなジャンルに挑戦して、仕事をエンジョイしているものだとばかり思っていた。


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映画出演


ラジオ内では『グリッター』が酷評?だったけど、これストーリーどんなだったんだろう?と調べてみた。

母親譲りの天才的歌唱力をもつクラブ・ダンサーのビリー(マライア・キャリー)は、幼い頃から歌手になることを夢見ている。そして彼女の実力を一端役見抜いた人気DJのダイス(マックス・ビースリー)は、彼女を引き抜いて大手レコード会社へ売り込みを始め、次第に彼女はスターへの道を歩み始めていくのだが…。(Amazonより)

なんだこれ?クリスティーナ・アギレラの『バーレスク』?もしくは『コヨーテ・アグリー』? 歌手が映画に出る場合ってこういうストーリー多いんだけど、普通の女の子を演じれば演じるほど不自然。歌手と女優の両立で上手くいってるのってジェニロペくらいじゃない?(シェールとかバーブラ・ストライサンドとかは別格なのか)ジェニロペは女優の重心も大きいからかも。ちなみにビヨンセもやっぱり映画出るとなると歌手の役が多い。普通の人は演じられないのよ。スター過ぎて。

しかしマライアはシリアス路線にも挑戦してるのがすごい。『プレシャス』ではほぼノーメイクでソーシャルワーカー役に挑戦。全然キラキラしていないマライア、割と良かった記憶が。と思いきやこんな記載が。嘘だろ。どんなキャスティングだよ。

マライア・キャリーが演じたソーシャルワーカーのワイス夫人役は、当初イギリスの女優ヘレン・ミレンが演じる予定であった(Wikipediaより)

これ、ヘレン・ミレンじゃなくて正解だったと思う。アメリカの黒人社会のストーリーだからイギリス人だとものすごく浮くと思う。

 

私の好きなマライアの曲・ベスト3

「ドリームラヴァー」(Dreamlover)
「オールウェイズ・ビー・マイ・ベイビー」(Always Be My Baby)
「ファンタジー」(Fantasy)

 

壮大なバラードもゴリゴリのヒップホップも嫌いじゃないんだけど、『ミュージック・ボックス』(1993年)と『デイドリーム』(1995年)あたりの路線が一番好き。ミディアムで爽やかなのがいい。ちなみに『ミュージック・ボックス』は累計全世界で3,200万枚、『デイドリーム』2,500万枚というんだからすごい。

あ、でもボーイズIIメンとの「ワン・スウィート・デイ」(One Sweet Day)も今でもそらで歌えるくらい聞いたし、ホイットニーとの共演「ホエン・ユー・ビリーヴ」 (When You Believe)もやっぱり良い曲だと思うし、冒頭のラジオでも言及されてた、ネスカフェ・サンタマルタのCMで明石家さんまとCG共演した際の「サンク・ゴッド・アイ・ファウンド・ユー」 (Thank God I Found You)も好きだし(98ディグリーズってまだ活動してたんか)・・・本当に90年代はマライアの曲なしでは成り立たなかったなぁ。

私が最も聞いたマライアのアルバム『デイドリーム』(Daydream) 発売からちょうど今年は30周年。今回このブログを書くにあたりWikipediaを参照したが、低迷期あり、病気発症あり、決して順調な時期ばかりではなかったんだなーと改めてそのキャリアの長さに感服。中でもこの一文が何よりも彼女を物語るにふさわしい。

現存するアーティストの中で最も全米1位を獲得した人物(1位獲得数は19曲で20曲獲得しているビートルズに次いで歴代2位、1位獲得週は97週間で60週獲得している2位のリアーナ、59週獲得している3位のビートルズに大差をつけている。)

Hopelessly In Love:悲劇のカップル お互いを燃やし尽くしてしまうふたり

Amazonプライムでドキュメンタリーを探していて発見。TLCのレフト・アイ、亡くなってもう22年にもなるか~と思い鑑賞。

最強ガールズグループTLCのリサ・レフト・アイ・ロペスとNFLのスター選手アンドレ・リソンの熱愛の軌跡をたどる。異なる世界で活躍する2人の出会いと別れ、度重なる衝突と復縁。そして世界的なニュースになった放火事件についても赤裸々に告白する。リサの早すぎる死の陰にあったものとは?

むかーしMTVでやっていた『Past, Present & Future』というTLCのインタビュー番組を見て、レフト・アイがこのNFLのスター選手と交際しており、彼の豪邸に火をつけた、というニュースは知っていた。そのインタビュー番組の中でレフト・アイは『あの事件について報じているニュースは全部ウソ。アンドレも私も何も話してないんだから』と言い放っていたので、それ以来ずっと真相が気になっていた。

今回このドキュメンタリーでその疑問は解消できた。が、感想としては「なんていうかお互いを燃やし尽くすまで愛憎をぶつけあうカップルだな……」という感じ。

インタビューではふてぶてしく答えていたように見えた印象を更に強めたのが1994年11月号のVIBEのこの表紙。

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確かアンドレの家を燃やしたのが同年6月のはず。その後に刊行された雑誌のカバーで消防士の格好をした上に、こんな文言が載っている。

TLC FIRES IT UP
BURNING UP THE CHARTS, BURNING DOWN THE HOUSE

『BURNING DOWN THE HOUSE』は直訳だと家を燃やせ、スラングだとイケてるパーティをやろうぜ、というような意味らしいが、このダブルミーニングはちょっとどうなんだ。いわゆる「シャレにならん」という言葉が浮かぶ。今ならそれこそSNSで炎上必至だろう。

インタビューを見ると、アンドレの妹がリサ(レフト・アイ)を非常に嫌っている様子で、最初は「お兄ちゃんかっこいいし、NFLのスターだし、彼女が自宅に入り浸ってて始終べったりしてたら、そりゃ面白くないわな」と思っていたが、だんだんと「これは仕方ないかもなぁ。リサがエキセントリック過ぎる」という感想になってくる。

TLCはT-ボズとチリはわりかし常識人というか穏やかそうなんだけど、リサだけ問題児っぽい感じはあったかもしれない。ソロになる云々もあったし。まあいくら豪邸で何部屋もあったって、彼女を呼び込むなら家族と別の家にしたほうが良かったよ、アンドレ。家族の前でいちゃつかれるの、ちょっと嫌じゃない?でも友人とか毎日入り浸ってはBBQやったりしてたらしい。そういうの疲れそうだけど。

ただこのふたり、何度別れてもまたお互いのもとに戻ってきていた模様。このふたりに共通するのは「父親を殺害されるという悲劇に見舞われていること(アンドレは継父)」、「その家族の長子であること(きょうだいを守る立場だった)」という点。早くに大人にならなくてはいけなかった者同士で惹かれ合うものがあったのだろうか。はたから見るとどう見たって別れたほうが良さそうなのに、なぜか離れないカップルっている。ホイットニーとボビー・ブラウンもそうだった。アンドレとリサの場合もDVはなかった、とは言っているものの、リサが亡くなっている以上真相はわからずじまい。

印象深かったのは、父親のDVに抑圧されてきたリサが、幼い頃に妹と見たという「バーニング・ベッド」という映画のワンシーン。妹が語ったところによると、DV夫に抑圧されている妻が夫の就寝中、寝室に火を付ける、というシーンがあったそうだ。(実際にアンドレ邸の火災現場に居合わせたリサの妹が「まさに『バーニング・ベッド』の世界よ」と語っていた)アンドレとの交際で追い込まれたと感じたリサが思いついた抑圧からの逃避が、幼い頃に思い描いていた『火を付ける』という行動なのだとしたら、あまりにも悲しすぎる。それでもリサを保釈しようと、呆れる母と妹を尻目に駆け回るアンドレ。こうなってくると「あんた家燃やされたんだよ?」と肩を揺さぶりたくなってくる。

またリサと2パックとの交際についても私は全然知らなかったので「えー!」という感じ。当時の様子をインタビューする相手が収監中のシュグ・ナイトってのもびっくりだったが。

また、アンドレが夜な夜な遊び回っている間に「彼と同じことをしてやろう」と思い、女の子だけで朝まで飲みに行った話など、おぉ!これはTLCの名曲『Creep』そのままじゃん!と思ったのだが、どうやらリサではなくT-ボズの体験談がヒントになったらしい。

歌詞は、彼氏に浮気されている女性が自分自身も秘かに浮気 (creep)するという内容で、女性の視点から書かれているが、これはリード・ボーカルのT-ボズの体験談を聞いたことがヒントになったとされる(Wikipediaより)

あの頃あんなに格好よくて世界中の憧れだった彼女たちですらこんな思いをしてたのか……と今さらながらため息が出た。

アンドレについては、NFLのスター選手になる前は上記の父親が殺害される以外にも、NFLドラフト前夜に家を銃撃される災難もあったそうだ。(有名になることをやっかんだ人の犯行だろうと家族は言っていたが、治安が悪すぎるだろう)

父を亡くし、家族を養うために早く大人にならなくてはいけなかった彼が、心休まる暇がないまま急激に華やかな世界にのめり込んで行き、リサとの交際によってますます自分の人生をハンドリングできなくなっていったように見えた。

最後のシーンでアンドレが17年ぶりにリサの家族を訪ねていく。現在の彼は高校生のコーチをしているとのこと。(「週末にトラブルを起こすな」という言葉に実感がこもっている)

結婚10年になる妻と四人の娘に囲まれて幸せに暮らしているそうで、互いを燃やし尽くすようなリサとの交際を経て、ようやく穏やかな愛を見つけられたようだ。娘たちにもリサのことを話している、と彼は語っている。(妻の名前も「リサ」というのはちょっと出来過ぎな気がしたが)

「彼女との交際に後悔などない」と言い切ったアンドレに、最後には「あっぱれ」と言いたくなった。

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【映画メモ】『地獄の黙示録』にまつわる本・映画・音楽

あらすじ

ベトナム戦争が激化するなか、アメリカ陸軍のウィラード大尉は特殊任務を命じられる。それはカンボジア奥地のジャングルで、軍規を無視して自らの王国を築いているカーツ大佐を暗殺する指令だった。ウィラードは部下と共に哨戒艇で川をさかのぼるが…。(Filmarksより)

◆視聴作品

 地獄の黙示録 ファイナル・カット(字幕版) / Amazonプライム


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◆きっかけ

 1)開高健「輝ける闇」を読了したこと

 2)YouTubeで下記を見たこと


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<感想メモ>

◆バージョンが多すぎる

Amazonプライムで検索したら3つもバージョンがあってしばし迷う。とりあえず最新の「ファイナル・カット」を選択。とはいえラストもそれぞれ違うらしいし、カットされてるシーンも見たいし、いずれ全部見る羽目になりそうな予感。

  1.  地獄の黙示録 ファイナル・カット(字幕版)(2020)3時間1分 ⇐これ
  2.  地獄の黙示録 特別完全版(字幕版)(2002)3時間16分
  3.  地獄の黙示録(字幕版)(1979)2時間27分

 

◆長い

 前半はぐいぐい見せるんだけど、フランス人プランテーションのあたりでダレる。当時の公開Verは確かここ丸々カットだったんだっけ。マーロン・ブランドのシーンもちょっと拍子抜け。(思わせぶりすぎるというか何というかセルフパロディっぽくなってない?)

 

◆名優ロバート・デュヴァルの怪演

 実際の軍人にモデルがいたそうだが、この人(キルゴア中佐)が出てくるとぐっと画面が活気づく。私は『ゴッド・ファーザー』での知的なトム・ヘイゲンが大好きなので、最初はぎょっとしたが、見ていくうちにどんどん惹きつけられた。部下が砲弾音に伏せているのにキルゴアだけは立ちっぱなしで傷一つ追わず、我が道を行く。出演時間は少ないのに圧倒的存在感。助演男優賞でオスカー受賞すべきだったと思う。

 

◆その他の俳優たち

 ウィラード大尉(マーティン・シーン)の「汗」が印象深い。動いていない静止状態であんなに汗が吹き出している演技シーンは初めて見たように思う。船の上で書類に目を通しているだけで顔いっぱいに汗が吹き出ており、それが蒸し暑さを強烈に象徴している。

 クリーン(ローレンス・フィッシュバーン)のあまりのあどけなさ、幼さに胸がつまる。実際のベトナム戦争に派兵されたアメリカ兵の平均年齢は19歳ぐらいだとか。まだ少年でしかない彼の姿にこの戦争の無謀さを見る。

その他、『現場の困ったさん』ツートップのマーロン・ブランドデニス・ホッパーのふたりの演技はちょっとオーバーアクトのような気もするが、見ごたえはあり。

 

◆音楽

 ワーグナーワルキューレの騎行はもちろん圧巻だが、ザ・ドアーズの「The End」はこの夏の私のテーマ曲になった。暑さに気だるさを感じる朝、すかさずこの曲を聞けばウィラード大尉の気分になれる。

 

<その他参考資料>

・ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録

地獄の黙示録撮影全記録 (小学館文庫)

 コッポラ監督の妻エレノア・コッポラによる現場ドキュメンタリーと撮影記録。本編を見たあとに目を通すと、いかに現場が大変な状況だったかがわかる。(台風で吹っ飛ぶセット、倒れる主演俳優、進まない撮影、のびのびになっていくスケジュール・・・)監督の子どもたちが撮影現場(フィリピン)に帯同し、転校までしているのには驚いた。エレノアさんも「表現したい人」だったのだと思うが、監督のあまりの仕事のスケールの大きさにサポートに回るしかなかったのだなぁとしみじみする。

 

 

 

ベトナム戦争 -兵士が見た泥沼化の真実-(Amazonプライム

忘却の危機にさらされているベトナム戦争。兵士たちは何と戦い、何を得て、そして何を失ったのか?退役軍人の証言を元に、1964年当初の大規模軍隊増強から1975年のサイゴン崩壊までの時期にフォーカスする。兵士たちの体験談と記録映像が紡ぐ、壮絶な戦場のすべてを目撃せよ!(Amazonより)

 全6話のドキュメンタリー。凄惨な場面もノーカットのため見るのが辛くなるシーンもあるが、その分ベトナム戦争の始まりから終結までを学ぶには最適の一本。

 

◆原案となった作品 『闇の奥』ジョゼフ・コンラッド

 原案の小説の舞台はアフリカのコンゴ。未読なので読了したら感想を改めて書きたい。

久々に「映画を観たなー!!」という濃厚な満足感が味わえる映画だった。この蒸し暑さを味わえたので、夏に観て良かった。

 

かつて「洋楽オムニバスCD」という文化があった

かつて「洋楽オムニバスCD」という文化があった。私は「MAX」が元祖だと思っていたが、どうやらEMIからでた「Now」が元祖だった模様。あったなぁ。その後も「Fine」だの「Woman」だの、ものすごい数があった記憶が。ヒップホップのもあったな。

私のオムニバスCDの元祖は上記に挙げた初代のMAXだった。あのオレンジのジャケットのやつ。今はCDではなくもっぱらiPhoneで音楽を聞いているので、Apple Musicで当時のMAXを再現したプレイリストを作ってみた。曲順も揃えている。

MAXを再現したプレイリスト

で、いま聞いているんだけど、これがなかなかに良い。オムニバスCDって「自分の知っている曲」と「まったく知らない曲」ブレンド具合がほど良いバランスだったのだなぁと実感。サブスクで自分の好きな曲だけ集めてプレイリストを作れるのも楽しいのだが、「どこまでも自分の好きな曲」っていうのもそれはそれで飽和するときがある。
そして新しいものへの刺激や好奇心が廃れていく気がするのだ。

例えばこのMAXの中だったら、ジミー・クリフやアスワドやプライマル・スクリームはこのCDでしか聞いたことがなかった。それでも今聞いてもいいなぁと思う。知らないアーティストへの手がかりにもなるのがこのオムニバスCDの良いところで、親切な曲目紹介がちゃんとついているのだ。これはサブスクには望めない機能。

収録できる曲をギガの単位で計る現代では驚きの17曲しか入っていないが、そもそも1000曲、10000曲なんて必要ないのだ。(私にとっては)

関係ないが、昔のCDコンポって5CDチェンジャーとかあったな。あれってなんだったんだろう。隔世の感ありだ。

子どもの頃、親が懐かしの洋楽オムニバスカセットテープセットなんかを買っているのを見て「古いものばっかり聞いて大人ってやだなぁ」などと思っていたが、自分自身がその道を辿っているのだ。いまや私が口ずさめるのは圧倒的に90年代の曲だけだ。

 

図書館で借りた「MAX BEST」のラインナップがすごい。

1    ミス・ア・シング
2    恋人たちのクリスマス
3    マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン (タイタニック・愛のテーマ)
4    ヴァーチャル・インサニティ

こんなの歌うしかないでしょう!と日曜のリビングで歌いまくったのだった。(CDプレーヤーは夫が持っていた)

『アメリカン・アイドル』の敗退者を見て思ったこと

かつてアメリカン・アイドル』 (American Idol) というオーディション番組があった。

名前のとおり全米から集まった挑戦者たちが明日のアイドル(というかスター)を目指して歌いまくる番組である。

2002年から2016年までの15シーズンというからかなりの長寿番組である。そして実際にスターも生まれた。これだけ第一線の歌手が残っているのはすごいと思う。

ケリー・クラークソン(シーズン1)

ジェニファー・ハドソン(シーズン3)

キャリー・アンダーウッド(シーズン4)

アダム・ランバート(シーズン8)

どのくらいの規模かというとまず一次審査がすごい。

一次審査
アメリカの各地で行われる(シーズンによって開催地は異なる)。応募者は、審査員の前でアカペラで歌い、審査員の判定で合格するとハリウッド予選進出となる。この1次審査で10万人から数百人程度にまで絞られる。Wikipediaより)

10万人も来るのか……と思うのと同時に、以前ちらっと見た地方予選は本当に運動会の本部みたいなテントにずらっと挑戦者が並んでいて、ほんの数秒歌って審査終了、みたいな感じだったので、実際に著名な審査員であるポーラ・アブドゥルサイモン・コーウェルの前で審査してもらえるのは本当にごく一部なのだろう。

DVD-BOXを見ているとスターの原石たちの歌唱力はもちろんだが、『ワースト』と称されるいわゆる「下手な」挑戦者たちがインパクト大である。毒舌のサイモンに「歌に終わりがあって良かったと思ったのは初めてだ」とまで言われている。

当時は自分もまだ若く「どうしてこんなに下手なのにわざわざオーディションなんかに出るんだろう」とかなりきついことを思ったりもしていた。(まあ中には実際冷やかし程度の野次馬的な挑戦者もいるにはいただろうが)

しかし年を経てしみじみ思うのは「いろいろと理屈をこねてやらないやつよりも、結果はどうあれ挑戦したやつはすごいのだ」ということだ。石をひっくり返すやつが偉いのだ。

ウィリアム・ハンという挑戦者がいた。カリフォルニア大学バークレー校で土木工学を学んでいた大学生である。にこにこと審査員たちの前に現れて、リッキー・マーティン『She Bangs』を歌った。とても奇妙な振り付けとともに。それは普通ならとても見ていられないレベルの歌とダンスだった。しかし彼の才能は歌とダンスではなかったのだ。

サイモンに「歌えない。踊れない。何か言うことは?」と言われたウィリアムは「全力を尽くしたのでまったく悔いはありません」と答えたのだ。

この瞬間、彼は「みじめな挑戦者」ではなくなったのだった。

彼のパフォーマンスは話題を呼び、多くのTVショーやラジオ番組へ出演することになる。そしてついにはアルバムまで出してしまうのだ。優勝どころかファイナリストにもなれなかったのに。

結果的にデビューアルバムは20万枚を売上げ、その後2枚のアルバムを出して彼は音楽活動から引退した。

 

ビル・ブライソンのコラム集「ドーナッツをくれる郵便局と消えゆくダイナー」にこんな箇所がある。大学の卒業生に向けたスピーチである。

何であれ人生の目標を追求すること。有名なバレリーナになりたいとか、オリンピックの水泳選手になりたいとか、カーネギー・ホールでコンサートを開きたいとか、何であれ、やりたいことがあれば、それに向かって突き進みなさい。如才のない連中に楽譜も読めないくせにとか、百メートル走のベストタイムが七十四秒では勝てっこないとか言われたとしても、とにかくやってみること。(中略)

私が本気で殴り飛ばしてやりたい人間が一人いるとしたら、それは「勝つのが重要なんじゃない。それがすべてなんだ」とほざく人間です。とんでもない考え違いです。参加することや全力を尽くすことが重要なのです。

ドーナッツをくれる郵便局と消えゆくダイナー (朝日文庫 ふ 19-1) | ビル ブライソン, Bryson,Bill, 佳奈子, 高橋 |本 | 通販 | Amazon


まさにウィリアム・ハンそのものではないか。

 

音楽の世界から去った後、彼は2014年にロサンゼルス郡公衆衛生局に入局、2017年にモチベーショナルスピーカーとなったそうだ。

"I showed that even the Average Joe*1 could succeed."(「私は平凡な人間でも成功できることを証明した」)/William Hung

*1:どこにでもいるような普通の男性のこと

アカデミー歌曲賞で見る・聞く映画音楽

 

お題「映画音楽が好き」

 

映画音楽には歌も入るよね?忘れられない主題歌、挿入歌を振り返る

 映画音楽といえばハンス・ジマージョン・ウィリアムズエンニオ・モリコーネニーノ・ロータ・・・などいくらでも名作曲家が浮かぶが、視点を変えてアカデミー歌曲賞をピックアップしてみたいと思う。

 ちなみに歌曲賞は作曲家。作詞家に授与されるもので、主題歌だけでなく挿入歌も対象。直近だと「RRR」で受賞した「ナートゥ・ナートゥ」のパフォーマンスが会場を湧かせたのが記憶に新しい。

 今回参考にしたのはこちら。

アカデミー歌曲賞 - Wikipedia

dnsn.jp

1980年代:色褪せない楽曲の宝庫

 82年「愛と青春の旅だち」の「Up Where We Belong」は名曲だよなぁ。ドラマティックなシーンを盛り上げる映画挿入歌のお手本。「ロッキー3」の「アイ・オブ・ザ・タイガー」が入っているのも嬉しい。

 83年「フラッシュダンス…ホワット・ア・フィーリング」、84年「ゴーストバスターズ」、85年「パワー・オブ・ラヴ」(バック・トゥ・ザ・フューチャー)、86年「愛は吐息のように」(トップガンあたりは、まさに曲を聞けば映画が浮かぶというケース。

そのシーンと曲が合致するだけで映画というよりもミュージックビデオの様相を帯びてきているのがこの頃。恐らく80年代からサントラを購入する、という文化が発生したのではないかと推測。

ポップ、ロックが席巻している印象だが、89年「アンダー・ザ・シー」(リトル・マーメイド)の受賞がアラン・メンケン・ディズニーの時代の到来を予告している。

1990年代:ディズニー一強時代に現れるあの超ヒット曲

まずはこれを見ればどれだけ90年代のディズニーとその楽曲がすさまじかったかわかるだろう。

91年「ビューティー・アンド・ザ・ビースト」(美女と野獣)/アラン・メンケン
92年「ホール・ニュー・ワールド」(アラジン)/アラン・メンケン
94年「愛を感じて」(ライオン・キング
95年「カラー・オブ・ザ・ウィンド」(ポカホンタス)/アラン・メンケン
99年「You'll Be in My Heart」(ターザン)

実に1990年から1999年までの10作品の中でディズニーが5作品受賞、そのうち94年のエルトン・ジョン、99年のフィル・コリンズ以外はすべてアラン・メンケンが受賞している。

受賞しなかった年でもノミネートされていたり、「アラジン」のように一つの作品から2曲ノミネートされている年もあるからすごい。ちなみに「ライオンキング」からは3曲ノミネート。

ディズニーの歌は旋律が美しいことはもちろん、作品内のキャラクターが歌っても歌手が歌っても違和感がなく、どのシーンにもこれ以上ないくらいにふさわしい。

ここに割って入るのが97年の「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」タイタニック)。これは映画主題歌史上もっとも有名といっても過言ではないだろう。

その他印象的なものとしては、「ビコーズ・ユー・ラヴド・ミー」(アンカーウーマン)、「ハウ・ドゥ・アイ・リヴ」コン・エアー)、「ミス・ア・シング」アルマゲドン)などのダイアン・ウォーレン作品が気を吐いていること、ランディ・ニューマントイ・ストーリーシリーズ)の名前がちょこちょこ出てきていることだろうか。

ブラック・ムービーについて書いたときに「ブラック・ムービーはサントラがいい」と書いたが、ここまでブラックミュージックはジャネット・ジャクソンの「アゲイン」(ポエティック・ジャスティス)くらいしか見新たらないのは寂しい。

パフォーマーとしては「ホエン・ユー・ビリーヴ」(プリンス・オブ・エジプト)でのホイットニーがいるが、あまり良いステージとは言えなかったと思う(声がかすかすだった記憶が)

個人的にはアリーヤ「ジャーニー・トゥ・ザ・パスト」(アナスタシア)のパフォーマンスが忘れられない。

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2000年代:ミュージカル、ドラマ、アニメーションのカオス状態

2000年は異色の幕開け。「シングス・ハヴ・チェンジド」ワンダー・ボーイズ)のボブ・ディランは、従来の美しい旋律やキャッチーなメロディ、明確な歌詞の世界、というディズニー世界とは正反対。

中継でのパフォーマンスだったが、ダニー・デビートがイチゴつまみながらシャンペンかなんか飲んでたのがちらっと映ってなんかすごく覚えてる。

もうひとり異色のノミネートがダンサー・イン・ザ・ダークのビヨーク。曲よりもそのドレスで度肝を抜いた。「白鳥ドレス」としてWikipediaまであるとは驚き。

白鳥ドレス - Wikipedia

とにかく2000年代は作品自体のジャンルがバラバラな上、私自身が見ていない作品も多く、80年代、90年代のようなヒット曲もないように見える。ドリームガールズから3曲入ったのが目立つくらいだろうか。

そんな中エポックメイキングとも言えるのが「ルーズ・ユアセルフ」8 Mile)の受賞!ラップ・ソングとしては史上初の快挙だそう。エミネム本人は欠席し共同制作者がオスカーを受け取ったが、面白いファッションだった。

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2010年~2020年代:007主題歌の受賞が目立つ

ダニエル・クレイグ主演になってからの007主題歌は以下のとおり。

「ユー・ノウ・マイ・ネーム 」(007 カジノ・ロワイヤル
「アナザー・ウェイ・トゥ・ダイ (007 慰めの報酬
2012年受賞スカイフォール(007 スカイフォール
2015年受賞「ライティングス・オン・ザ・ウォール (007 スペクター)
2021年受賞「ノー・タイム・トゥ・ダイ」 (007 ノー・タイム・トゥ・ダイ) 

かなりの高確率と言えるのではないだろうか。

ただし超個人的な意見を言わせてもらうと受賞曲全部暗いのが気になる。私は007主題歌だとティナ・ターナーゴールデンアイとかマドンナダイ・アナザー・デイが好きなのでどうにもこの年代の主題歌とは相容れないのだ。

他にはコモン、ジョン・レジェンドによる「グローリー」、シンシア・エリヴォによる「スタンド・アップ」のパフォーマンスが素晴らしかった。ファレル・ウィリアムス「ハッピー」もいい曲だったな。

 まとめ

ざっと駆け足で振り返ったが、やっぱり覚えている曲は圧倒的に80年代・90年代が多いなぁと実感。

ホイットニー・ヒューストンやらセリーヌ・ディオンのようないわゆるディーバ系の歌手が主題歌を担う時代はもう終わったのか?という感想も。現代だとビヨンセくらいか。

どこかの機会で、今度は歌曲以外の映画音楽を書いてみたい。