生放送のTV番組『Q-1グランプリ』決勝戦に出場したクイズプレーヤーの三島玲央は、対戦相手・本庄絆が、まだ一文字も問題が読まれぬうちに回答し正解し、優勝を果たすという不可解な事態をいぶかしむ。いったい彼はなぜ、正答できたのか? 真相を解明しようと彼について調べ、決勝戦を1問ずつ振り返る三島はやがて、自らの記憶も掘り起こしていくことになり――。
読めば、クイズプレーヤーの思考と世界がまるごと体験できる。人生のある瞬間が鮮やかによみがえる。そして読後、あなたの「知る」は更新される!
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知識量が膨大でも優れたクイズプレーヤーにはなれない、ということがよくわかる小説だった。イメージしたのはいわば脳内の借り物競走というような感じ。もちろん頭の中にたくさんの情報が詰まっている。ただし、それはただの情報や知識にしか過ぎない。
クイズプレーヤーは問題に沿った回答を選ぶ、そのスキルが必要なのだということ。
「日本で一番高い山は富士山、ですが・・・」のような『ですが』が代表的なひっかけである、という常識が一般的に広がったのはいつ頃からだろうか。
少なくとも私の幼少期(1980年代)にはそんなひっかけなどなかったと思う。時を経てクイズはどんどん複雑な文脈になっていき、百人一首と同じように「ここまで読んだら回答はひとつしかない」という分岐点でいかに早く回答するか、というテクニックが物を言うようになっていく。
この小説を読んでいくと『どんなものだって答えになり得る』という気になってくる。そして優れたクイズプレーヤーとは、優れた問題作成者でもあるのだということがわかる。自分で作れるからこそ回答にたどり着くプロセスがわかるのだ。
そりゃそうだ。どれだけ球種を知っていても、実際にその球を投げられることとは全然違う。カレーをつくるには何が必要ですか?という問いに対して何種類の具材を挙げられても、実際に作れるわけではないのだ。
主人公・三島のキャラクターがいい。純粋にクイズを追究していく生真面目な姿勢で、ライバルの本庄の謎を解いていく。きちんと伏線回収もあり、最後はビターといえばビターだが、謎解きは完結する。
そしてもっとも驚いたのはこの点だった。【東北育ち】は私にとっても大きなキーワードだったのだ。

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